債権 wikipedia|無料辞書
債権(さいけん:独Schuldrecht)とは、主に
大陸法の法律用語であり、ある者(債権者:独Gl?ubiger)が特定の相手方(債務者:独Schuldner)に対して一定の行為(給付)をするよう要求できる
権利をいう。債務者の側から見た場合はこれは債権者に対する義務であり、
債務(さいむ:英仏obligation、独Schuld(独・墺))と呼ばれる。また、債権者と債務者のこのような法律関係のことを、債権債務関係(英仏obligation、独Schuldverh?ltnis、独Obligation(スイス法))という。いずれも視点が異なるのみで、内容を異にするものではない。日本では、「債権」という言い方が通常で、「債権債務関係」はあまり用いられないが、欧米では「債権債務関係」に相当する表現(obligationやSchuldverh?ltnis)がむしろ通常である。
冒頭に述べたような債権の概念そのものは
ローマ法に由来する。日本においては明治期においてヨーロッパ法(特に
ドイツ法、
フランス法)を
継受した際にローマ法由来の債権概念が導入され、現在の解釈学においてもその影響は強い。なお、導入当初においては債権は「人権」と表記されていた。
当事者間の合意により発生する債権を約定債権といい、契約による債権がこれに属する。一方、法律の規定によって生じる債権を法定債権といい、事務管理、不当利得、不法行為による債権がこれに属する。
・民法について以下では、条数のみ記載する。
◆ 債権の特質
債権は
物権と同じ
財産権ではあるが、以下の点で物権とは異なる。
・物権は物の支配を目的とする権利である(物権の直接性・物権の対世性)が、債権は債務者の行為(給付)を目的とするものである(債権の対人性)。
:債権の対人性のコロラリーとして「売買は賃貸を破る」がある。すなわち、例えば、所有者によって目的物が譲渡された場合を比べると、地上権者は新所有者に対しても地上権を主張できる(継続して利用できる。)が、賃借人は新所有者に対して賃借権を主張できない(継続して利用できない。)。もっとも、不動産賃借権や船舶賃借権については
民法・
商法及び
借地借家法においてこの重大な例外が規定されており、一定の対抗要件を具備することにより新所有者にも対抗することができるようになっている。いわゆる「債権の物権化」と呼ばれる現象である。
・相互に矛盾する同内容の物権は併存しえないが(物権の排他性)、相互に矛盾する同内容の債権は併存しうる。
:例えば、同じ土地について建物所有目的の地上権を二重に設定することはできないが、建物所有目的の賃借権を二重に設定することは可能である(後者は債務不履行責任によって解決される。)。
◆ 債権の目的
債権の目的(対象)は債務者の特定の行為であり、これを「
給付」という。債権は目的に応じていくつかの下位概念があり、において、具体的には以下のものが規定されている。
◇ 特定物債権
特定物債権(とくていぶつさいけん)とは、物の個性を重視した特定物の給付を内容とする債権をいう。例えば土地の引渡し債務や中古品の引渡し債務などである。
・特定物債権の主な特徴
・反面その履行は現状でその物を引き渡せばよいとされる()。
・
瑕疵担保責任(・)の解釈につき、売買の目的物が特定物であることを要すると解する法定責任説とこれに限られないとする債務不履行説との対立にも関連する。
・その他、弁済の場所()。
◇ 種類債権
種類債権(しゅるいさいけん)とは、目的物(不特定物)を種類と数量だけで指示した債権をいう。
・種類債権の特徴
・履行までには特定(民法第401条2項)を生じて目的物が具体的に定まり、以降は原則として特定物債権と同じ扱いとなる。
・市場に種類物が存在する限り
履行不能を生じないし、特定を生じない限りは調達義務を負う。
制限種類債権
制限種類債権(せいげんしゅるいさいけん)とは、目的物の範囲に限定のある種類債権をいう。
例えば特定タンク内のタール5000トンのうち2000トンの引渡債務などである。この場合に特定タンク内のタールの全てが滅失すれば
履行不能となる。品質は問題にならず、債務者は、特定タンク内のタールを給付すればよい。債権者が「タールの品質が悪い」と受け取らなければ
受領遅滞が生じる。
この点で通常の種類債権と異なる。その他は種類債権に準じる。
◇ 金銭債権
金銭債権(きんせんさいけん)とは、金銭の支払を目的とする債権をいう。代金債権、貸金債権等、実際の取引における大部分の債権(
金額債権)である。なお、特殊な金銭債権として
金種債権と呼ばれるものがあり、これには特定の種類の金銭の一定量の給付を目的とする相対的金種債権と、骨董的あるいは記念的な貨幣の給付を目的とする絶対的金種債権があり、いずれも通常の金銭債権(金額債権)とは法的な扱いが異なる(
金銭債権の項目参照)。
・通常の金銭債権(金額債権)の特徴
・金銭価値が下がっても補填する必要がない。
・履行不能にはならない。
・各種の通貨で弁済をすることができる()。
・損害賠償の額(遅延損害金)は、年5分の法定利率によって定める(1項、)。
・損害賠償(遅延損害金)については、債権者は、損害の証明をすることを要しない(2項)。
・損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない(3項)。
◇ 利息債権
◇ 選択債権
選択債権(せんたくさいけん)とは、数個の給付の中から選択によって定まる債権をいい、その選択権は、原則として債務者に属する()。
債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は、相手方に移転する()。
: 無権代理人の責任:履行又は損害賠償()
◆ 債権の効力
◇ 債権の効力
債権には一般に以下のような効力があるとされる。
・給付保持力:債権者の履行による給付を保持しても
不当利得とはならない効力。債権の必要最小限の効力とされる。
・訴求力:訴訟手続で債権を実体法上の権利として確認できる効力
・執行力:確定判決を債務名義に執行しうる効力